そばが好きだ。あったかいのも、つめたいのも、とにかくそばだったら何でも好き。もちろん、それなりの老舗店に行ってみることも多いけど、普段使いで重宝する富士そばは、私にとって日常のオアシス。
ちなみに富士そばの正式名称は「名代富士そば」であり、読み方は「なだいふじそば」である。
昔はサラリーマンのためのお店だったはずだけど、最近では女性客もたくさんいる。老若男女に愛される日本一のそばチェーン店。それが富士そば。
ただ、ひとつ懸念がある。
「富士そばで、うどんは注文してもいいのか」ということ。
券売機でチケットを購入すると、中年のおじちゃん店員から「そば?うどん?あったかいの?つめたいの?」と聞かれる。
これは暗黙の了解で、「念のために聞いとくけど、そばだよね!」という確認みたいなものだと思っていた。
というのも、以前、私の前のホスト風の若い男性客が、うどんを注文したら、おじちゃん店員が軽く「チッ」と舌打ちしたのだ。
それ以来、私の中で富士そばでうどんを頼むのは、ビアガーデンで焼酎を頼むような、カリスマ美容師にスポーツ刈りをお願いするような、「出来なくはないけど、何でウチ来たの?」みたいな、あまりよろしくない行為だと勝手に思っていた。
富士そばにもうどん客は意外といる
しかし、ある時、ふと周りを見てみると意外にも、うどんを注文している客がフツーにいることに気づいた。
もしかして、うどんも注文していいのか? なんだかやたらおいしそう。そう考えると、急に富士そばうどんを食べてみたい衝動に駆られてくる。
ある日、券売機でチケットを買い、恐る恐る店員のおじちゃんに手渡す。
私「う、うどんで」
店員「あったかいの?」
私「はい」
店員「はい、うどんいっちょう!」
おじちゃんはピクリともしない。あの「チッ」はなんだったのか。まもなくして、あったかいうどんが届く。七味をたっぷりかけてから口へ運ぶ。
「うま・・・?あれ、意外とふつう?」
念願の富士そばのうどん。しかし、食べた感想は、可もなく不可もなく。
そう考えると、あのおじちゃんの「チッ」はあながち間違っていなかったのかもしれない。
やっぱり富士そばは、富士そばであって、富士うどんではなかった。