自分が書きたいものを書くべきか、誰かが読みたいを書くべきか

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ライターに立ちはだかる二択

よく初対面の人にライターをしていると話すと「好きなこと書いてお金がもらえるなんてうらやましいなー」なんて言われることがあります。

たしかに自分で選んだ仕事ですし、文章を書くことが好きなので当たってるっちゃ当たってる。

でも、厳密にはちょっと違う。

自分が書きたいものを書くべきか、誰かが読みたいものも書くべきか。

常にライターにはこのジレンマがつきまといます。

それは自分が書きたいものが、必ずしも誰かが読みたいものとイコールとはならないから。

自分が書きたいものを書くこと。それはライターの基本であり、何よりも楽しいこと。最近はブロガーが増えていますが、ブログでも同じかもしれません。自分が書きたいことを書かなきゃ、本当に爆発力のある面白い文章はきっと生まれない。

ただ、はたしてそれが誰かが読みたいものなのか。ニーズはあるのか。極端な例ですが、仮にあなたが「どうしても私が思いついた『ホラー映画ダイエット』について書きたい。冷や汗をかくと代謝が上がるんだ!」と一生懸命に書いても、きっと読みたい人はいない。それよりも本当に今、読者が求めているのは「ダイエットサプリの最新事情」についてかもしれません。

で、いやいやそんなのつまらない。私はもっと世の中をあっと言わせるようなことを書きたい。でも、仕方ないから「ダイエットサプリの最新事情」でも書くかー、となると、やっぱりどこか勢いみたいなものはなくなってしまいがち。

割り切ろうと思ってもなかなか割り切れない。かっこよく言えば、アーティストと同じなのかもしれません。やりたい音楽では売れない、だから売れそうな歌をリリースする、みたいな。

書きたいと読みたい、近づけるには?

別にお金儲けのためにやってるわけじゃないという人や、何を書いてもウケちゃうという天才は除いて、(私やこのブログを読んでくれている方は、どちらにも当てはまらないと仮定して)

あくまで私の考えや経験から言いますが、まずライターとして「今、何が求められているか」つまり誰が何を読みたいかを深く考えることは、絶対に避けてはいけません。そして、たぶんほとんどの人がこれをあまり突き詰めない。感覚でやっている。なんとなくこれ流行ってるでしょ?くらいの感じ。

私が考える「誰かが読みたいもの」、それが本当に正解なのか?繰り返し繰り返し突き詰めて、そこでようやく書くべきものが見えてくるのです。

そして、その時に自ずと「私は絶対にこれについて書きたい」と思えてくるようになる。

つまりは、書きたいものと読まれるものが近づいてくるのです。

それが私の出した答えでした……

Number清原号の衝撃

しかし、ときに「これを書きたい!」という圧倒的なパワーが「読みたい」を生み出すことがあるのも事実でもあります。

例えば、Numberの清原号。

こうした奇をてらった企画(しかもネガティヴ方面での)って、基本的にはNGとされています。

それは十中八九、いつもより売れなくなるから。

はたから見ると斬新に見えて、すげーと話題となっても、実際に購買する読者はシビア。興味を持って買うという人がいる一方、絶対に買わない人も増えます。さらにNumberという一流雑誌ならなおさらで、すでにいる定期購読者を失うリスクだって大きい。

でも、Numberは清原選手を表紙にし、特集を組んだ。それは絶対に「私はこれを書きたい」というたぶん感覚的な思いから始まったものだけど、それはこれまでの常識を破壊する形で「読みたい」を生んでいるかもしれない。少なくともその可能性を生み出していると思うのです、そして、これこそが本当の本当の本当の正解なのではないかと。

今回のNumberの件は編集長による編集後記も載っていて、ライターによるものではありませんが、私たちライターもこうした読みたいと思わせる熱い情熱は改めて大切にするべきという気がしてなりません。

紙からウェブへと読者を奪われる中で、しかもウェブではSEOのように読む人が何を欲しがっているかが前提にある時代に、今回のNumberのやったことはは何か雑誌メディアの意地のようでもあり、これからのウェブにも残さなきゃいけないもの。私は紙でもウェブでもライターをしていますが、そんなことを考えさせられました。

Number、売れてるといいなぁ。

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