童話「みにくい広告の子」
あるところにウェブという名の広告がいました。
ウェブはいつも他の仲間たちにバカにされていました。
テレビ「やい、ウェブ。俺はキングオブアドのテレビ様だ。今日もたくさんの視聴者を満足させてやったぜ。CM好感度調査って知ってるか?みんなが好きなCMを選ぶんだけどな、そもそもこれはみんなが俺様の存在を認めてるってことだよな。だってそうだろ?お前には好感度調査があるか?いや、ない!なぜなら、みんなお前の存在が大嫌いだからだ。タウンワーク!デオーウ!氷結ストローング!」
ウェブ「でも、ボクはみんなの好みに合わせることもできて……」
ラジオ「おやおや、まるでストーカーみたいな言い草でやんすなぁ。あっしなんて、冠を持ってるでやんすよ。エースコックpresents!ヨドバシカメラpresents!聖教新聞presents!あぁ、なんて素晴らしい響き。ねぇ、テレビ様」
テレビ「おう、ラジオよ。よく言ってやったぞ。俺たちはな、クライアント様なんだよ。番組タイトルだって、番組内容だって、なんなら出演者のキャスティングだって言いたい放題だっつーの。女優やアイドル抱きまくりだっつーの!」
ラジオ「ウェブ氏、チミは冠じゃなく、せいぜいタイトルに【PR】でも付けとくでやんすよ」
ウェブ「ボクだってネイティブアドっていう……た、助けて、雑誌くん!」
雑誌「ちょっと一緒にしないでほしいな。キミはひょっとすると読者を騙そうとしているんじゃないか?僕の場合、きちんと広告であると明かしているし、そもそも最初にお金を払ってから買ってもらっているんだ。一緒にしないでほしいな」
新聞「そうじゃ、そうじゃ!」
ウェブ「そ、そんな。でも、ボクはいろんな人に貼ってもらえて……」
テレビ「貼る?お前はビックリマンシールか何かなのか?」
ポスター「ちょっと、テレビの旦那。それは聞きづてならねぇな。オイラは街中も駅の中も電車の中も、貼られまくりだけど、誰も文句を言わねぇよ。みんな退屈な時間にオイラたちを見ることで満足しているのさ。こいつとは一緒にしないでくれよ。なぁ、兄弟?」
デジタルサイネージ「イエス!ウィー ラブ アド!バァーット、アド ヘイト ユー!」
テレビ「わりぃ、わりぃ。みんな広告は仲間だ。チラシ、看板、電柱、野球場、映画館、バス、バルーン、ホットペッパービューティー、ドカント、チンドン屋……みーんな仲間。ただひとり、こいつをのぞいてな!」
ウェブ「ひ、ひどい。なんでボクだけ……どうしてみんなボクのことばかり嫌うの?同じ広告なのに。みんなに無料で良い情報を届けたりだってできるし、もしもお邪魔な時はスルーしてくれたってかまわない。なのに、どうして?」
ウェブはインターネットのしげみにうずくまって、寒い冬をたえしのびました。
しかし、そのうち、お日さまはしだいにあたたかさをまし、ハミングバードが美しい声で歌い出しました。
春が来たのです。
ウェブは体がウキウキしはじめると、つばさを羽ばたいてみました。
すると、体が浮くではありませんか。
ウェブ「ああ、飛んだ。僕は飛べるようになったんだ!」
スマホ、パソコン、タブレット……ウェブはいろんな空を飛びまわります。空を見上げるとお日さまがにっこり笑っています。その笑顔はどことなくアルファベットのGのようにも見えます。
G「バナー、テキスト、メール、動画、タイアップ、リスティング……お前は何にだってなれるぞよ」
地上を見下ろすと先ほどの広告たちが領地を奪い合い、争いが起こっています。
「いつの日か、ボクも好きって言われたり、冠をかぶったりできたらいいな。そしたら、こいつともお別れだ」
頭に載った【PR】がいつの日か素敵な冠に変わる日を夢見て、ウェブは今日も空を羽ばたくのでした。
おしまい
【PR】宣伝ですが、おバカな仲間たちとこんなブログも運営中です。