エッセイやコラムが好きだ。
でも、エッセイストやコラムニストはあまり好きじゃない。そもそも「エッセイスト」と自ら名乗っちゃうような人間の文章を読みたいと思わない。
だから、もっぱら小説家のエッセイを読むことが多い。普段は小説を書いている作家が書くエッセイ。小説の時とは違った面白さに溢れていたりもするから、「へー、この小説家さんってこんな人なんだ」という発見もある。
でも、なんでこんなに面白いんだろう?とふと疑問に思って、いろいろと考察してみた。
小説家のエッセイは取材力&観察力が素晴らしい
まず、小説家の書くエッセイが魅力なのは、普段の小説を書くにあたっての「豊富な取材」にあると思う。小説のテーマのために様々な場所へ出向き、様々な人と出会って、そこで様々な体験をしている。
そこでは私たち一般人が普段なかなか行けない場所に行くことも多い。作家だから行ける取材や、金銭的に余裕があるからこそ行ける海外などにも頻繁に行っていて、そういう話はやはり新鮮ですごく面白い。
何よりそこで小説家たちが物事を見る視線、「観察力」は非常にユニークで、読んでいると思わずうなってしまう。奥田英朗なんかその例だと思う。
妄想力がすごい
エッセイとは基本的には、ある体験から自分の思いや考えをつづっていくことだから「現実にあった話」がメイン。だけど、作家のエッセイには多くの場合、「妄想」が加わっていく。
小説家の本来の職業は「架空の物語を作ること」だが、彼ら彼女らは、エッセイにも「架空の物語」を盛り込んでくる。それらが現実にあった話と見事にミックスされると、読者としてはたまらない。
特におすすめしたいのは、ベストセラー作家として人気の三浦しをん。とにかく妄想力がハンパない。普段の小説はそこそこファンくらいだけど、エッセイに関しては大ファンになってしまった。
やはり作家は変人である
第一線で活躍している小説家は、みな天才である。それは普段読んでいる小説を読めばわかることだ。常人では思いつかないような物語を圧倒的な筆力で生み出していくのが作家という職業だ。
しかし、エッセイを読むと、普段は忘れているそのことに改めて気づかされる。そして、彼ら彼女らは天才であると同時に「変人」でもあるとわかる。
乙一の『小生物語」は日記という体裁のエッセイではあるが、これはエッセイストには書けない代物だと思う。小説家という天才であり変人である職業の人だからこそ書ける、日常がある。
普段は読まない作家や、小説自体は好きじゃなくても、エッセイになるととたんに自分好みになるということは多い。
ちょっと小説に飽きたなという時、小説家が書くエッセイ本を手に取ってみると、予想していなかった「面白さ」が待っている。