毎日、とりあえず本屋に一度は足を運ぶようにしています。単純に本が好きなのと、ライターという仕事をしているので、今どんな本が読まれているのかという、いわゆる「パトロール」をかねて。
で、やっぱり気になったのが『教団X』(中村文則)で、前にも書きましたが基本的にライターなら流行っているものには目を通しておいた方がいいというのが私の持論です。が、アマゾンレビューを覗いてみるとあまりに酷評の嵐だったため、正直かなり悩みました。
「アメトーークの読書芸人の話は鵜呑みにしないほうがいい」
「ストーリー性がない。時間の無駄」
「ちんけで陳腐。ひどい出来」
みたいなコメントが並んでいます。これだけ酷評されるのも珍しい気がして、普段は本を買うことに対してためらわない私も、さすがに躊躇せずにはいられずに…。
でも、結局は購入することに。思いっきりハードルが下げられたこともあり、自分の中で「ストーリー展開を追いすぎない」「だから、焦らずゆっくり読む」と決めて、ページを進めていくと…
「いやいやいや、めちゃめちゃ面白いじゃん!」
買って正解でした。たしかに難癖をつけようと思えばいくらでもできますが、それ以上に読んでいて単純に私には面白く感じたというのが本音です。
読書に「無駄」はないのでは?
内容的な部分で、私のような右でも左でもない人以外には嫌悪感を抱く描写も多くてそれがネット上での低評価につながったのかもしれませんが、それ以上に酷評されていたのは「著者最長」との触れ込みもあった、物語の長さだったのではないかと思います。
自分にとって面白くない本を何百ページも読まされる…時間の無駄と感じるものわからなくはありません。
でも、ことエンターテイメントに関しては、たとえどんなにつまらなくても「時間の無駄」にはならないのではないかとも思うのです。
本だけじゃなく、テレビにしても映画にしても「つまらなかった」という感想を持てたことが経験できただけでも、経験しなかった自分よりもプラスになっているんじゃないかと。特にライターのような仕事をしている人ならなおさら、良い作品だけじゃなくて、駄作にだって目を通しておいた方がいい!(今回、私には『教団X』が面白かったから私はこんなことがいえるのかもしれませんが…)
いや、例えばせっかく行列に並んで不味いラーメンを食べたとしても、しょーもない彼氏と5年間付き合って結局別れたとしても、やっぱり「時間の無駄」じゃない気がするんです。
なんとなく世の中的に、ビジネスでの効率化や作業工数の削減を求めて「リーン(無駄を削ぎ落とす)」を追いかけることが良しとされる風潮によって、私生活においても「極力、無駄なことはしたくない」と思いがちですが、仕事以外には思いっきり無駄な時間があってもいいんじゃないかと。
むしろ自分が興味を持った本について買うか買わないかをウダウダと悩んでいた時間のほうが、よっぽろ無駄だった気さえします。
読みたいなら、他人がどうこう言っていようと読む。「友人の評価はイマイチでもshe so cute!」と昔、誰かが歌っていた気がしますが、本の場合にも当てはまることは多いのではないかと私は思うのです。
…それでも私のように買うか悩んでいる人は46ページくらいまで立ち読みして決めたらいいと思います。まずは本屋さんへGO!